そらいろのパレット

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原田マハ『太陽の棘』

「やっぱり世界の平和はスポーツからだな、それとあれか…」
ビデオでなでしこジャパンの活躍を見ていた夫がそんなことを言っている。
「はぁ? なに言ってるのぉ。 あっ、そうそうえぇっとあれって芸術のことなんじゃない?」
台所で洗い物をしながら私が答える。
私の頭には、つい先日読み終えたばかりのこの本があった。

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凄惨な戦いの跡がまだ色濃く残り、軍関係者による傷害事件などが頻発し、
軍関係者は住民との交際を禁じられていた1948年の沖縄で
出会うはずもない者たちが出合い、友情を深めて行った物語。
出会うはずもない者たちとは、沖縄に軍医として赴任した駆け出しのアメリカ人精神科医と
首里城の北の森の中にコロニー?をつくって暮らす貧しくも誇り高い沖縄の画家たちだ。

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のちの沖縄画壇を代表する画家たちと、若き軍医。
アメリカ人と沖縄人、勝者と敗者、支配するものとされるもの…
そんな垣根(壁?)を飛び越えて彼らを強く結び付けたのは絵を愛する心だった。
戦後すぐの沖縄で米軍軍医と民間人が「信頼と友情」で結ばれたなんて、
なんだか夢物語のようだななどとちょっと意地悪く思いながらも読み進めば、
貧しいけれどたくましい沖縄の人々、
優しげな女性や愛らしい子どもたちのことなどをさしはさみながら語られる彼らの信頼と友情が
深い森の奥に強く弱く差し込む木漏れ日のようにきらめいて見えてくるではないか。

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<2015.6.23 ねむの花@散歩道>

この小説は史実に基づいているとのこと。
本の表紙(写真・上)に使われたのは若き軍医の肖像画、
裏表紙(写真・下)はその肖像画を描いた画家の自画像だと聞けば納得がいく。

  タイラが、私の言葉をさえぎった。
  「…エド。この絵を、連れてってくれ。あんたと一緒に」
  私は、一瞬、息を止めて、タイラの目を見た。

そうしてこの2枚の絵はアメリカに渡ったのだ。

だったら何故…
個々のレベルではこんなにも分かり合えるのに、
愚かな戦争などして殺し合わねばならなかったのだろうと
悔しい思いが募るばかりだが。



そして、
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<2015.6.23 アガパンサス@散歩道>

図書館の「きょう返却された本」の棚で偶然見かけたこの本との出会いが
6月23日「沖縄慰霊の日」であったことに私はとても驚いている。
私にとっては偶然であったが、
その日返却した方は、たぶんそうと知ってこの本を読んだのだろう。

どんな方だろうなどと想像するとちょっと楽しくなって、
思わずブックレビューなど書いてしまった。あらら。


★原田マハ『太陽の棘 UNDER THE SUN AND STARS』文藝春秋 2014.4.
★写真はクリックで拡大します。


by pallet-sorairo | 2015-06-30 11:03 | 街暮らし | Comments(6)
Commented by ゆき at 2015-06-30 22:51 x
23日に借りた大人の本5冊の中の一冊ね。
図書館で「皆さんのブックレビュー」というの掲示したらよさそう。
「今月の図書館だより」なんてね。
Commented by こんの at 2015-07-01 07:17 x
原田マハ『太陽の棘 UNDER THE SUN AND STARS』文藝春秋

読みたくなってきました
たぶん、読むでしょう(笑)
Commented by pallet-sorairo at 2015-07-01 19:25
☆ゆきさん
そう、たまたま見かけたの。
でも、「きょう返却された本」の棚はフィクションだけなの。
ほかのジャンルのもあったらそれもおもしろいと思うんだけれど
そんなことしたら置き場所が足りなくなるし配架の段取りも大変かもね。
Commented by pallet-sorairo at 2015-07-01 19:26
☆こんのさん
読むに値すると良いのですが。
Commented by こんの at 2015-07-09 14:39 x
ニシムイの丘は、太陽を集めて、まばゆい刺を作っていた。
それは、かすかな痛みを伴って、私の目を、胸を、冴えざえと刺した。

感動の物語、ありがとうございます
Commented by pallet-sorairo at 2015-07-09 14:53
☆こんのさん
読んでくださったのですね。
嬉しい感想をありがとうございました。
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=私の山歩き街暮らし空の色= 散歩道でみかける鳥や虫や花も。


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