そらいろのパレット

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朽ちる


朽ちるもの、儚いものは、愛おしく美しい。
時としてそう思うのは、たぶん私だけではないだろう。
なぜか。
私たちは、そんな時、そのものたちに「いのち」を感じるから
なのではないか。

『朽ちる鉄の美』と言う本に出合って、
あらためてそんなことを思ってしまった。

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さて、朽ちるものたちをいくつか。

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<蔵の鍵。七宝の金象眼が施されていた跡が見える>


完璧な仕事をしていただろう堅固な鉄の錠前も
人の手が入らなくなると?こんなにもぼろぼろになってしまうのだ。
「鉄の純度が高いとこのように朽ちる見本」と本文にある。
ここまでになるのにはどれほどの時間が経ち、
その間、この錠前はどんな人生?を送ったのだろうか。


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「わかめ刈鎌」の美しさ。
これ以上ないシンプルさではないか。
この鎌はどんな竿の先にくくりつけられていたのだろう。
夫の操舵する小船から姉さん被りした妻が身を乗り出すようにして
海中に揺らめく若芽を刈り取る姿を想像してしまったりするのだが…。


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山歩きを趣味とする私とすれば、鉄の山道具ピッケルは外せない。
私自身はピッケルを使うような山へは行かないが、
最近の全身アルミニウム合金やチタン合金でできたものに比べると
昔のピッケルは本当に美しいと思う。
鋼鉄でできたヘッドと木材(ヒッコリー?)でできたシャフト
そのつなぎ目の見事なこと!


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螺旋状に捩じられた柄がなんとも繊細ですばらしい金魚すくいの道具。
正式名称は「ポイ」と言うのだそうだ。
しかし、その「ポイ」もすっかりプラスチック製にとって代わられてしまった。
色とりどりの「ポイ」は、こどもが遊ぶ道具として楽し気ではあるし、
プラスチックもまた経年劣化と言われる朽ちかたをするが
それは、「朽ちる鉄の美」には到底かなわない薄汚れようであると思う。


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<糸切狭。亡き母の形見>


明治生まれの母は、子だくさんの貧乏所帯である我が家の家計を
莫大小(メリヤス / ニット)の「縢り(かがり)」や「ボタン付け」の内職で助けていた。
ボタンを付ける位置に鉛筆でしるしを付けたり、
付け終えたカーディガンのボタンをはめて母を手伝っている小学生の私を思い出す。

今は美しくデザインされた手芸用の糸切狭が売られているけれど
私が時たま思い出したようにする刺繍の糸端を切る時に使うのは
もちろんこの糸切狭だ。
鈴を結び付けたひもがだいぶ傷んでしまっているが、
母が付けたこの鈴をほかのもので結びなおす気には到底なれないのだ。

朽ちるまで
このままにしておこう。



★『朽ちる鉄の美 機能とカタチのデザイン』
 山本剛史・著  矢野 誠・写真   淡交社 2012
★人魚姫?の文鎮は、長女が中学生の時の作品(鉛製?)
★写真はクリックで拡大します。



by pallet-sorairo | 2015-08-21 09:11 | 街暮らし | Comments(14)
Commented by cyaa9090 at 2015-08-21 11:26
テレビ、和風総本家 日本っていいなで日本職人を観ると
使う人の側に立ち使いやすさを妥協しない姿勢にいつも感動します。

まだまだ社会全体が貧しかった頃
私の育った環境と似ています。
母もボタン付けや和服を縫って家計を支え
私も子供ながらに針に糸を通す手伝いを母の傍で喜んでしたものです。
黒光りするぐらい使いこなれた握りばさみ
記憶にありますが残念なことに残っていません。
sorairoさんは全てに於いて道具に思いやりがありますね。
Commented by amanojakusan at 2015-08-21 12:33
福井へ行く予定ですので、タケフナイフビレッジにも寄ります。越前打ち刃物の名品を見られるので「わかめ刈鎌」もあるかもしれません。
私が最初に購入したピッケルは好日山荘の海野治良氏にすすめられたフランス製の木製シャフトでした。欧米では女性が主に使うとのことですが、やや軽めでピックからブレードへのカーブが私にはとても使いやすく、それ以後金属製のピッケルに替えても同じメーカーのを使っています。
お母さんの形見の糸切鋏、いい形をしていますね。使われながらだんだんに使いやすい形に変身していった道具たち、魅力的です。
Commented by unburro at 2015-08-21 14:42
奇しくも、昨日、もの作りをする年上の友人と
「昔の人は、物を大事にしたものだ。」という話をしていました。
布団の綿の打ち直し、端切れで作ったパッチワークのような座布団、
毛糸は何度も解いて編み直した、とか。
もとはといえば、縫い終わって、針に残った糸を捨てられない、または、残らないように糸を切りたい、という話。
そんな手仕事のそばには、palletさんと同じ、使い込まれた握り鋏があるのです。
Commented by koruko-yuki at 2015-08-21 16:14
私も年を経た鉄製品、大好き。
それにしてもpalletさんのお母さんは(お嬢さんも)幸せね。
こんなに大事に手元に置いて思い出してもらえて。

あ、私も母が編み物や洋裁をしている傍で手伝っていたんだけど…
翻って思うに、
わが子の脳裏にはどんな母の姿が残るのだろうか。
Commented by amanojakusan at 2015-08-21 20:12
そうそうBSTVでしてましたが、わかめ刈鎌がこんなに細くできているのは、波の影響を避けるためなのだそうです。用途にあった形こそ美そのものですね。
Commented by pallet-sorairo at 2015-08-21 20:47
☆cyaaさん
職人さんのものを作る姿は、本当に感動ものです。
cyaaさんは同年代だから、
同じような懐かしいシーンが目に浮かぶんですね、嬉しいです。
つましい母に形見の品などそんなにあるわけではなかったのですが
母のそばに何時もあったこの鋏、
ぜひにと言って末っ子の私がもらったのです。
Commented by pallet-sorairo at 2015-08-21 20:54
☆Mr.amanojakusan
「タケフナイフビレッジ」ググってみました。
体験教室などもあっておもしろそうですね、私も行ってみたくなりました。
ピッケルを持ったamanojakusanの姿、想像しただけでカッコイイです(^^。
↓の追伸のお話し、なるほどと思いました。
最近は養殖が多いので刈ることも少なくなっているようですが
若芽を刈るって、実際に見てみたいです。
福井旅行のレポ楽しみです。
Commented by pallet-sorairo at 2015-08-21 21:01
☆unburroさん
>布団の綿の打ち直し、端切れで作ったパッチワークのような座布団、
>毛糸は何度も解いて編み直した
とっても懐かしいことばかり!
解いた毛糸を湯気で伸ばして、広げた両手首に巻いてぐるぐるしたこととか
打ち直した布団綿って四方をひと幅の紙で包んでひもで結んであったなとか。
ああ、私も張りに残った糸なかなか捨てられないヒトです(^^ゞ
Commented by pallet-sorairo at 2015-08-21 21:05
☆ゆきさん
鉄の光は素敵よね。
マンホール蓋も彩色してあるものより、鉄そのもののほうが好き。
>わが子の脳裏にはどんな母の姿が残るのだろうか。
えっ、そりゃ
「好奇心超旺盛で、なんでもコレクションしちゃって、山ばっかり行ってる」
でしょ(^^ゞ
Commented by shizenkaze at 2015-08-21 22:29
鉄製のものは手入れをされないままだと錆びて最後には形がなくなります
木製のものも同じなので愛着を持って接していたいです

何年も前に釣りをしていました
当時はステンレス製やチタンのフック『鈎』も出ていましが切れた時に自然に帰るような鉄以外のものは使いませんでした

職人さんとは交流が多く色々な職人の技を見てきましたがたった1本の犬釘でも使い方では数百年は持つので命ある限り大切にしたいですね~
糸切狭の構造はバネの反発で刃が開きますがこの形状のものは現在では世界的にも少ないようですね
私も糸切りにはこれを使っています~(*´∀`*)
Commented by pallet-sorairo at 2015-08-21 23:30
☆ゆきさん 追伸
私の ↑ コメント、考えてみたら
これって、私の目に見えてるゆきさんだった(^^;
ごめんなさい。
ゆきさんはよき母親です。
Commented by pallet-sorairo at 2015-08-21 23:34
☆shizenkazeさん
>当時はステンレス製やチタンのフック『鈎』も出ていましが切れた>時に自然に帰るような鉄以外のものは使いませんでした
さすがshizenkazeさん、素晴らしいです。
この握り鋏は糸を切るには最適な道具だと思います。
世界的にも珍しいカタチなんですね!
Commented by mimi-74 at 2017-02-22 14:24
こんばんは!
伺ってあちこちクリックしているうちにこちらへ来ていました。
ラストの糸切鋏にビックリ。
半世紀前に渡米した時に同じような鋏を持って来て、今でも愛用しているのとそっくりなのですよ。
切れ味は昔の通りの気持ちよさですから、今も何かというと引き出しから出して使っています。
「はて?」とよく見たところ「美鈴」とあります。その上に横に入っている文字は読めませんが・・・
Commented by pallet-sorairo at 2017-02-22 20:49
☆mimiさん
古い記事へお越しくださってありがとうございます。
最近は鋏と言えばx型のものがほとんどですが
昔、家庭にあるのは握り鋏だったように思います。
↑コメントで握り鋏が「世界的にも珍しい形」と教えていただいて
大切にしたい文化遺産だなと思ったことでした。
お互い大切にしましょうね(^^ゞ
私の鋏には「東光」の文字が読み取れますが、
後の文字はちょっと分かりませでした。

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=私の山歩き街暮らし空の色= 散歩道でみかける鳥や虫や花も。


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