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『星野道夫の旅』没後20年/特別展


広大なツンドラ地帯を移動するカリブーの大群、
氷の上でまどろむホッキョクグマの親子、
つぶらなひとみでじっとこちらを見つめるタテゴトアザラシの赤ちゃん、
海面から飛び上がるクジラの巨体、
流れの中で遡上する鮭を捕らえるグリズリー(ハイイログマ)。
長い時間をかけて苔に覆われ鎮まり返った深い森、
それぞれの色をそれぞれの形に込めて咲く美しい花々、
極寒の地に暮らす人々の、真実を見極める力を持っていると思われる目の光、 
夜の大空にめくるめく光のカーテンを翻すオーロラ……。

目をつぶると、この日見て来たアラスカの様々なシーンが現れる。


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アラスカの自然・動物・人々の暮らしを、愛情あふれる写真と文章で知らしめた星野道夫の
没後20年の回顧展を見て来た(10月25日)。
東京展を見逃して残念に思っていたら、ラッキーなことに横浜に巡回してきたのだ。
今度こそ見逃せない。

私が星野道夫をはっきりと知ったのは、出版されてすぐの『旅をする木』を読んだ時。
なんと素直な優しい文章を書く人なんだろうと思ったことを覚えている。
それからは折に触れ写真集なども見るようになって
文章だけでなく、
普通の人には見に行けない場所のスケールの大きい写真にも魅せられてしまったのだった。


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村人総出で巨大なクジラを余すところなく解体し、

みんなで分け合ってからあごの骨だけを海に帰す儀式の写真もあった。


「私たちが生きてゆくということは、誰を犠牲にして自分自身が生きのびるのかという、終わりのない日々の選択である。生命体の本質とは、他者を殺して食べることにあるからだ。近代社会の中では見えにくいその約束を、最もストレートに受止めなければならないのが狩猟民である。約束とは、言いかえれば血の匂いであり、悲しみという言葉に置換えてもよい。そして、その悲しみの中から生まれたものが古代からの神話なのだろう。

動物たちに対する償いと儀式を通し、その霊をなぐさめ、いつかまた戻ってきて、ふたたび犠牲になってくれることを祈るのだ。……」

『旅をする木』より。


この文章を読むと

取材中にヒグマに襲われ命を落とした星野道夫の軌跡を思わずにはいられない。



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d0288144_01022953.jpg雑誌ブルータス2016.9.1号に綴じ込まれていたアラスカ絵地図『星野道夫 旅の足跡』。
おみやげグッズ売り場ではいつもは絵ハガキを買うことが多いのに、今回はこれが欲しくてブルータスを買ってしまった。


「頬を撫でる極北の風の感触、夏のツンドラの甘い匂い、白夜の淡い光、見過ごしそうな小さなワスレナグサのたたずまい…… ふと立ち止まり、少し気持ちを込めて五感の中にそんな風景を残してゆきたい。何も生み出すことのない、ただ流れてゆく時を大切にしたい。あわただしい人間の営みと並行して、もう一つの時間が流れていることをいつも心のどこかで感じていたい」
(展示会場に掲げられていた星野道夫の言葉から/出典記載なし)。


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「The MAYOR  Shishmaref   ALASUKA  USA]
星野道夫が最初にアラスカ・シシュマレフ村へ送った手紙の封筒のあて名書き。

大学生であった星野がシシュマレフ村の写真を見て感動し、得意とは言えない英語で
「…誰も知っている人はいないが、仕事は何でもするのでどこかに置いてもらえないだろうか。
返事を待っています。」と書いた手紙から彼の旅は始まったと思えるのだが、
宛先の住所もわからないところへ出した封筒のあて名書きには、彼の一途な想いが伝わって感動的だ。

今回の展示会場を入るとすぐの場所に飾られていた。
会場内は撮影禁止だったので、特徴をメモしておきあとで私が描き直したもの。
星野さんの筆跡はなるべく似せて書いたつもりですが(^^;




★横浜高島屋で10月30日(日)まで。
★写真はクリックで拡大します。


by pallet-sorairo | 2016-10-28 10:01 | ちょっとお出かけ | Comments(10)
Commented by fusk-en25 at 2016-10-28 11:42
5、6歳の頃。
アメリカン文化センターの子供のための図書館で
「エスキモーの子供たち」と言う本を借りて。
興奮して読んだことを思い出します。
氷を切り取って家を作るところに行きたかった。
アメリカに手紙を出そうなんて発想がなかったことが悔やまれます。。。笑。
Commented by unburro at 2016-10-28 11:54
京都で開催されていた時、本当に行きたかった…
まだまだ人混みの中へ出かける自信がないので諦めましたが、
この秋はゆっくり、本を読み直そう、と思っていたところです。
アラスカへ出した手紙…いいですね〜
Commented by shimasaan at 2016-10-28 17:12
生きている星野道夫さんと、偶然に出会ったのは、アラスカのランズエンドというホテルの近くでした。
彼は、ビーチに片膝をついてカメラを抱え、白頭鷲が飛来するのをジーッと待っていました。
その日のディナーは、ご一緒のテーブルで、アラスカでの仕事のことなどイロイロお聞きしましたが……印象に残っているのは、
「自分の撮りたい写真と、コマーシャルベースの仕事の、兼ね合いが難しい…」という言葉でした。
そして、その数年後に、テレビの取材で訪れていた、アリューシャンでヒグマの襲われてしまったのです。
私も、「旅をする木」は、なんか身近な生活に詰まりそうになったときなどに、なんどもなんども読み返しています。
彼の、深く透き通ったような優しい眼が、忘れられません。
Commented by pallet-sorairo at 2016-10-28 17:42
☆fuskさん
さすがfuskさん。
小さいころからよその国へ行ってみたかったんですね(^^。
Commented by pallet-sorairo at 2016-10-28 17:44
☆unburroさん
巡回展が近くへ戻ってくれてラッキーでした。
>アラスカへ出した手紙…いいですね〜
今回は、写真よりもむしろこの封筒が見たかったのです。
感動ものでした。
Commented by pallet-sorairo at 2016-10-28 17:51
☆アラセブンさん
あっ、パソコンなんか見ていていいんですか?!
どうなさったかと思っていたところです。
お仕事柄(って、はっきりしたことは存じませんが(^^ゞ)
星野さんと「偶然」にでもお会いすることはおありなんじゃないかと
思っていました。
写真を拝見するだけでも、
星野さんの眼が「深く透き通ったような優しさ」なのがよくわかります。
彼が今生きていたら、どんなメッセージを送るでしょうか。
私たちは、惜しい人を失くしたと思っています。
Commented by ヒサ at 2016-10-28 18:19 x
ご無沙汰しております。

星野道夫さんの特別展、気がつきませんでした。
職場が横浜で高島屋さんの前はよく通るのに、っていうか、今週、買い物に行ったのに。。。
相変わらずのうっかり者です。

星野さんの最期は、その頃の私にはショックでした。
いまでも星野さんだからこその最期だったのかもしれないとはなかなか思えず、星野さんが生きていたら、いまはどんな写真を撮っていたんだろう、という気持が強いです。
Commented by pallet-sorairo at 2016-10-28 18:26
☆ヒサさん
わっわっわっ、!ヒサさんだっ!!
元気でしたか、来てくださってとっても嬉しいです。
この展覧会、30日日曜日が最終日です。
あの封筒だけでもぜひご覧になってください。
展示されていたカヤックが少しも古びていないのが
私にはなんだか哀しかったですが。
Commented by PochiPochi-2-s at 2016-10-28 18:33
こんばんは。
見逃した星野道夫展が横浜に来てくれてよかったですね。
「アラスカへ出した手紙」
よかったでしょう?
わたしも"感動もの"でした!

「頭を撫でる極北の風の感触、………」の文書は、
「旅をする木」の「ワスレナグサ」の最後の段落に出てきます。
"頭"じゃなく"頬"じゃないかな。
ひょっとしてpalletさんの入力ミス?

魅力的な写真展でしたね。





Commented by pallet-sorairo at 2016-10-28 18:55
☆PochiPochiさん
PochiPochiさんのところであの手紙のことを知って
これは見に行かなくちゃと思ったのです。
「頭」は私のメモミスです。
会場のうす暗いところでメモしたので…なんだかヘンだなぁと思ったのですが(^^;
そして出典も後で調べなくちゃと思っていたところでした。
お礼が後先になってしまいましたが、いろいろと本当にありがとうございました(^^。
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=私の山歩き街暮らし空の色= 散歩道でみかける鳥や虫や花も。


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